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北海道行ったよ、の巻。
空港で小さなレンタカーを借りてニセコまでドライブ。街を抜けて、濃い緑のなかを走って行くのは気持ちがいいなあ。丘に伸びるまっすぐな道を見ると「ああ、北海道に来たな」って思うのです。空気が澄んでいるからか、おひさまの輝き方が違う。
「あー、ひまわり畑だよ!」「お茶ちょうだい」「川だあ、わあ、きれーい」「アメマスいるかなあ」「お、おかーさん、おしっこ!」
ええっ、ちょ、ちょっと待ってよ。あ、ドライブイン見っけ。毎度大騒ぎです。
インターネットで予約したコンドミニアムは木々が生い茂る林のなかにありました。車で入って行くのを一瞬ためらうようなゴトゴト道の先。
車を出ると、わあ、山の匂いがするよ! あれ、せせらぎの音も! すー、はー。
お出迎えしてくれたのは、なぜかニュージーランドから来たというお兄さんです。
「ここのオーナーはオーストラリアのひとです」。へえ!
「今日と明日はアナタたちだけ、そのあと隣の部屋にもうひと家族来るよ」。
「なんかわからないコトあったらいつでも電話してね」。
「あ、コレ、オーナーからのプレゼントです」ワインだ。
中を案内するでもなく、お兄さんはひゃららーんとあっという間に去っていきました。のちにこのお兄さんは、食器の在処がわからない件と、テレビの地上波が見られない件で、二回足を運ぶはめになります。
二階建ての一軒家がふたつ合体したようになっている、新しい感じの家です。一階にベッドルームとお風呂。二階にキッチンとリビング。
トイレに浮世絵、階段には坂本龍馬の巨大ポスター。小さな日本酒樽がテレビの周りにぽこぽこ飾ってあるのも不思議だし、台所の調理器具や食器も外国仕様の大振りなものが多くて、ここってどこの国? と一瞬くらっとする。使った形跡のない直径一センチ、長さ五十センチくらいの菜箸も出てきました。これは......何用だ?
夫はリビングに置いてあった大量のDVDからさっそく『グリーン・ディスティニー』を見つけ出し、格闘シーンを娘4歳に見せています。何しに来た?
今回の旅は6日間。どこを拠点にするか考えたとき、ふと頭に浮かんだのはニセコでした。前に昆布温泉(いい名前でしょう)に泊まって、野菜の直売所でじゃがいもやアスパラを買って帰ったことがあったのです。おいしかったんだよ。でもそれ以上に他の野菜たちも気になって気になって。買いたいけど我慢したという、心残りの記憶の方が強かったのです。
「蝦夷富士」と称される羊蹄山の、湧き水を汲める公園も印象的でした。湧き水、清流、といったものが大好きな私は、1日8トンも湧いてくるという羊蹄の水に感動。羊蹄山って平原にどんと単独でそびえていて、その姿がかっこいいのです。あれを毎日間近に見られるって、気持ちがいいだろうね。
てことは、今回の旅はニセコで炊事ができる宿を探せばいいのか。と思いつきで決定したのです。
いつもそうですが、家族旅行は私が全部決める。各メンバーのニーズはもちろん満たしますよ。地図を広げて「ココへ行きます」と家族に宣言。夫には「尻別川、昆布川でフライフィッシングができるよ」と言うとぴくりと眉が反応。娘には「ソフトクリームがおいしいんだよ」と言うと「やったー!」と瞬時に賛成であります。へっへー、カンタンな人たちだなあ。
滞在中は毎朝、野菜直売所へ買い出しに出かけましたよ。自炊式の滞在はこれができる。枝豆300円、トマト180円、パプリカ200円、ナス150円、インゲンも150円。とうもろこしは3本で200円。農家さんたちが次から次へと台車を押して直売所に入ってきます。ぷりぷり、つやつやの野菜を山盛りにして。これが買わずにいられましょうか。デパ地下以上にテンションが上がるね。
キッシュと人参ジュースが名物、というデリカテッセンにも行きました。人参農家の奥さんがお家の一角を改装してやっているお店で、土つき人参5本100円で売ってくれました。好きなの取ってねと袋を渡されたので選んでいたら「そんな小ちゃいの! 大きいのもう1本持っていきなさい」と、ちょっとした大根みたいな大きさの人参をおまけしてくれた。
「人参はね、上半分が甘いの。そして、芯よりも外側。美肌のためにいっぱい食べてね」だって。その奥さんにたまご農家さんを紹介してもらって買いに行ったら、たまごの奥さんは今日はあんまりおまけがなくってごめんねーと言いながら、キュウリ3本と、緑と黒のまだらもようの珍しいインゲンをがさっと袋に入れてくれました。どこもダイナミックなおまけですね。
車を走らせると、右にじゃがいも畑どーん。左はとうもろこし畑どーん。さすが北海道、規模が違うんですねえ。
湧き水公園で水を汲んで、原っぱでお弁当を広げて。娘はワンピースが破れるほどに夢中で遊んでいる。羊蹄山は羊みたいなぽわぽわ雲を乗せている。
夫は地元の友達と釣りに。私は子どもとピクニックしたり、親子ラフティングに行ってみたり。で、帰る前には温泉です。
夕方になるととうもろこしを蒸し、枝豆をゆで、だんだんにご飯のしたくを始めます。パプリカを丸焼き、マリネして。ラタトゥイユ、お肉をじゅーっと焼いて。ホタテのバター醤油炒め。焼きそば。たまごかけごはん。かりかりベーコンのサラダ。キュウリは味噌つけてぽりぽり、トマトは塩で。
じつに気楽なご飯です。とにかく新鮮な食材だから、何も工夫しなくてもおいしいんですよね。毎日同じもの食べてたなあ。同じものもおいしければ平気なのね。せっせと枝豆を噛み、とうもろこしを歯でこそげながら、そんなことを考えていました。
体に夏の栄養を、大量に送りこむことのできた晩夏でした。
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