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二つの顔を持つ男たち
ありがたいことにほぼ満席だったようです。
この時期に、劇場に足を運んでいただいたお客さんに感謝します。
4月30日からは、東京公演の幕が開きます。
公演を打つ方としては、様々な想定の上にできる限りの思いで劇場でお迎えするしかありません。
よろしくお願いします。
そういえば、震災後最初に観に行った芝居は三谷幸喜さん作・演出の『国民の映画』でした。
まだ地震から二週間ほどだったので、客席には空席も目立ちました。
大人気の公演で、チケットは完売だったと聞いていたので、きっと来たくても来れなかった方達が大勢いたのだと思います。
そんな中で芝居を打つことの意味を考えながら開演を待っていました。
ナチスドイツと当時の映画人を題材にした芝居は重い内容ですが、とても面白かったです。
『ジャンヌ・ダルク』では演出家としてご一緒した白井晃さんが、着ぐるみで丸まると太ったゲーリング役を、快演していました。
終演後、白井さんにご挨拶に行ったところ開口一番「いやあ、始まってから一時間、出番がないんだよ」と不満そうです。
いやいや、白井さん。あなた『ジャンヌ・ダルク』の時は、同じようなこと言って不満そうな役者に「後半、見せ場があるし、いい役なんだからいいじゃないか」って言ってたじゃないですか。
「演出と役者で、まったく意見が変わるんですね」というと「ああ、そうですねえ」と苦笑いしていました。
でも、僕が喜々として突っ込んでいると、一緒にいた家内が「でもこの人も、編集者の時と作家の時で言うこと全然変わりますから」という一言を。
なるほど、確かにその通りでした。
よく会社の仕事で打ち合わせをしていても、雑談に入ったときに打ち合わせ相手から「あ、顔が変わった」と言われることがありました。
編集者モードから作家モードに変わる瞬間が、わかるらしい。
人間って面白いですね。
話は変わりますが、元キャンディーズの田中好子さんが亡くなりました。
人知れず、ガンと闘っていたのですね。
前々回『春一番』の話を書いた時に、久しぶりにキャンディーズの曲を聴いて「ああ、こんなにハーモニーがきれいだったんだ」と認識を新たにしたばかりでした。
三人は仲がいいと言うし、再結成とかしないのかなあとのんきなことを考えていたところだったので、本当に驚かされました。
自分達よりちょっと上の世代。
伊藤蘭さんは、いのうえひでのりとは新感線ではありませんが『怪談牡丹灯籠』でご一緒したりしていて、まったく縁がないわけではない。
改めてその若さを残念に思います。
謹んでご冥福をお祈りします。
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