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此春の散華
編集部 三橋麻子
散華という言葉を思い出していた。
特攻隊の人たちの最期を表現するのにも使われるが、本来は仏教の言葉だ。落慶供養などの大きな法会の際、御仏を迎えるために、蓮の花弁を撒き、その香気で鬼神を追い払う。それを散華という。
私がかつて奈良の薬師寺で見た散華は、とても優雅で華やかなものだった。
朱塗りの御堂の前に、黄色や紫色の絹の法衣をまとった僧侶がずらりと居並び、朗々とお経を唱和する。その最中、赤、白、黄、緑、紫と五色の紙で作られた無数の花びらが、青空に向かって撒かれ、はらはらと宙を舞う。拾ってみると、蓮の花びらの形をしていて、裏には一枚一枚かわいらしい仏さまの絵が描かれていた。
震災ではたくさんの人が亡くなった。弔いの儀式さえしきれないほどの、たくさんの人がーー。
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